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問題社員対応

【弁護士が解説】上司の指示に従わない社員への対応

2023.10.31

<問題社員の相談事例>

 

「資料を作成してください。」

「取引先に訪問してください。」

などと上司から仕事の指示をしても、自分の好きな仕事ではないのでやりたくないなどの理由で、仕事をせず、反抗的な態度をとる社員に対し、どのように対処すべきでしょうか。

 

問題社員が会社に及ぼす影響

 

会社の指示に従わず、上司に反抗的な態度をとる問題社員は、さまざまな悪影響を及ぼします。

 

・業務が停滞し、生産性が低下する

他の従業員の士気が低下する

・優秀な従業員が退職する

・周囲の従業員が同調し、反抗的な態度な態度をとるようになる

 

問題社員は会社の業績に影響を及ぼすことから、適切に対応することは非常に重要な課題です。

 

指揮命令権の根拠

 

まず、会社が社員に対し、業務命令権を有している根拠を確認しましょう。

 

会社が、組織として営利を追求するものである以上、会社が効率的に組織を動かし業績を伸ばすためには、社員が会社の方針に従って労務提供を行ってもらわなければなりません。

社員が、会社・上司の指示に従って業務を遂行することは行うことは労働契約の本質的なものになります。

 

すなわち、労働契約が成立した場合、会社は、社員に対し、賃金支払義務を負うことになりますが、一方で、社員は、労働契約の合意内容の範囲内において、労働の内容・遂行・場所などに関して会社の指示に従った労働を遂行する義務を負います。

 

上司から、社員に対する資料の作成や取引先への訪問の指示は、日常業務の労務指揮です。

したがって、当然に労働契約の範囲内として、労働契約を締結した段階で、使用者は、社員に対し、業務命令権を有しているといえます。

 

業務命令としての上司の指示方法

 

まず、上司が、社員へ指示する場合に、業務命令であることを明確にしたうえで指示命令する必要があります。

 

「手が空いたときでいいので資料の作成をお願いします。」

「可能であれば取引先に訪問するほうがよいのではないか。」

など、期限や指示の内容が抽象的なものにとどまる場合は、業務命令とは評価されません。業務命令と評価されない場合、社員が指示に従わなかったとしても、命令違反との認定をすることはできず、処分することはできません。

 

したがって、社員に対して、指示命令をする場合は、

「パワーポイントで資料の作成を20日の午前中までにお願いします。これは業務命令です。」

「取引先のA社に、10日までに訪問し、契約書の締結を行ってください。これは業務命令です。」

 

というように、手段や期限を明確に伝えたうえで、業務命令であることを明確に伝える必要があります。

 

さらに、常習的に上司の業務命令に従わない社員に対しては、社内メールや書面で業務命令を行うことが大切です。

具体的な指示の内容を記録に残すことが後にトラブルに発展した場合に有力な証拠となります。

 

なお、部下ではなく、上司の指示方法や部下に対する接し方が原因で、生産性が低下しているケースも多く見られます。

上司の指示方法に問題がある場合には、管理職に対する教育費が必要な場合もあります。

 

業務命令に従わない社員に対する懲戒処分

 

資料の作成や取引先への訪問といった上司の指示が、具体的なもので、業務命令として行われた場合、これを社員が正当な理由なく拒否すると、業務命令違反として懲戒事由に該当することになります。

 

ただし、いきなり懲戒解雇処分にすることはできません。懲戒解雇は企業外に放逐する重大な処分ですので、裁判上解雇の効力が認められるのは非常に限定的な場合にとどまります。

 

したがって、実務上は、まず書面で注意・指導を行い、それでも改善されなければ、けん責処分を行います。

それでも改善されなければ、減給処分や出勤停止処分を検討することになります。

 

最終的に、改善が認められなければ、普通解雇を検討することになりますが、解雇をめぐるトラブルを避けるために、退職勧奨を行った上で、可能な限り合意退職を目指すべきです。

 

当事務所でサポートできること

 

問題社員への対応を誤ると、トラブルに発展し、労働審判や民事訴訟が提起される可能性があります。

裁判において、解雇無効と判断されると、未払賃金の支払が命じられ(いわゆるバックペイ)、多額の金員の支払いを余儀なくされる場合があります。

 

裁判所は、会社が社員に対し、注意・指導などを十分に行ったかどうか、反省・改善の機会を与えたかを重要な認定基準としており、これが不十分もしくは立証できない場合には、解雇無効と判断される可能性が極めて高くなります。

 

したがって、問題社員への対応を行う場合には、後に裁判に発展した場合に、解雇の有効性が認められるかどうかを常に意識する必要があります。

軽い懲戒処分から段階を踏んで対応すること、注意や指導の記録を残しておくことなどは、解雇の有効性を認定するのに重要な要素となります。

 

当事務所では、問題社員への対応について、豊富な実績があります。

会社からご相談いただいた場合は、対応方針についての助言や書式の提供など多くのサポートメニューを要しております。

問題社員への対応に関するご相談は、ぜひ当事務所にお気軽にお問い合わせください。