1.迅速な債権回収の必要性
債権回収とは、決められた期限までに支払われなかった債権の満足を得るために、交渉や法的手続を講じることをいいます。企業にとって最も身近な債権回収は、売掛金の回収でしょう。
改正民法が施行された2020年4月1日以降に発生した債権の消滅時効は、債権の種類を問わず、①権利を行使できることを知った時から5年、または、②権利を行使できる時から10年となりました。
5年というと随分と余裕があるように感じるかもしれませんが、債務者の経済状態や財産状況は刻一刻と変化します。
取引先との関係性を悪化させたくない、大ごとにしたくないと考えて、行動を起こさないでいるうちに、債務者が経営破綻して債権回収ができなくなるケースも少なくありません。
未回収債権の増加は経営を揺るがすことにもなりかねませんので、債権回収に向けた行動を迅速に開始することが重要です。
2.債権回収の方法
債権の回収方法には様々なものがありますが、大きくは、任意回収と強制回収に分かれます。
債権額、未回収の期間、債務者の経済状態・財産状況等の事情を踏まえて、適切な方法を選択する必要があります。
(1)任意回収
漫然と記載されている例も散見されますが、契約の目的を達成しない場合に契約を解除できるというような場合には、何が契約の目的であるかが重要な意味を持ちますので、できる限り明確に規定しておく必要があります。
債務者と支払条件等について交渉して回収する方法です。債務者の経済状態・財産状況を踏まえて、保証人や担保権の設定を求めたり、代物弁済や債権譲渡(※)を求めたり、強制執行に備えて公正証書を作成したりする場合もあります。
相殺とは、相手方に対して同種の債権を有している場合に、双方の債権を対当額で消滅させる意思表示をいいます。
債務者が経営破綻してしまった場合でも、債務者に対して債権とともに債務も有している場合には、相殺によって、債権を回収したのと同様の効果を得ることができます。
債務者が第三者に対して有している金銭債権を譲渡してもらい、債務者に変わって第三者から回収する方法です。
(2)強制回収
担保権の実行手続は、債権者が債務者の財産について抵当権などの担保権を有しているときに、これを実行して当該財産から満足を得る手続です。
例えば、不動産に抵当権が設定されている場合には、不動産を競売にかけて強制的に売却し、その代金から債権回収を図ることができます。
また、担保の目的物である不動産から生じる賃料等の収益から、債権回収を図る方法もあります。
いずれも裁判所に申立書と必要書類を提出する必要があります。
強制執行手続は、判決などの債務名義を得た債権者の申立てに基づいて、債務者に対する請求権を、裁判所が強制的に実現する手続です。
債務名義とは、強制執行の申立てに必要な文書を意味し、これを得るためには、民事訴訟、支払督促、民事調停等の手続を裁判所で行う必要があります。
民事訴訟は、裁判官が法廷で双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る制度です。60万円以下の金銭の支払いを求める場合には、少額訴訟制度を利用することもできます。
支払督促は、申立人の申立てに基づいて裁判所書記官が金銭の支払いを求める制度で、相手方からの異議の申立てがなければ判決と同様の法的効力が生じます。
裁判所の調停委員会のあっせんにより、話し合いによる解決を図るもので、調停で合意された内容は判決と同様の法的効力が生じます。
裁判所での手続以外で債務名義を得る方法としては、公証役場で作成する公正証書があります。
手続の難易度、要する時間等、各手続のメリット、デメリットを理解したうえで、最適な方法を選択する必要があります。
なお、債務名義を取得したとしても、相手方が財産を保有していない場合や財産の所在を把握できない場合は、強制的に債権を回収することはできません。このような事態に陥らないためには、事前の調査が極めて重要です。
例えば、法人の登記事項証明書を取得すれば、代表取締役の自宅住所も確認できます。不動産の全部事項証明書を取得すれば、担保権設定の有無が確認できます。さらに、民間信用情報機関の企業財務情報等を確認して、経営状態を知ることも可能です。
また、将来の強制執行をするための準備として、民事訴訟を提起する前などに、相手方の財産をあらかじめ確保するための民事保全手続を行うことも検討する必要があります。
3.弁護士への依頼
交渉により債権回収を図るのか、裁判所での手続により債権回収を図るのかは、事案ごとに異なります。
方法や手続の選択に時間を費やしている間に、債務者の経営状態が悪化したり、財産が散逸したりして、債権回収が不可能となってしまっては元も子もありません。
債権回収トラブルが発生してすぐに弁護士に相談して的確なアドバイスが得られれば、債権回収の可能性は格段に高まります。
弁護士が介入することによって、債務者が交渉に応じて、早期回収につながるケースも少なくありません。
また、民事保全、民事訴訟、強制執行といった複雑かつ専門性の高い法的手続を弁護士に依頼すれば、債権回収の可能性が格段に高まるだけでなく、企業は日々の業務に専念することができます。
初回のご相談は無料となっておりますので、債権回収トラブルでお困りの企業の方は、まずはお気軽に当事務所にご相談ださい。