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1.労務トラブルとは

労務トラブルとは、使用者と労働者との間で、雇用関係について生じるトラブルの総称です。

厚生労働省の統計によると、個別労働紛争解決制度(※)における総合労働相談件数は15年連続で年間100万件を超えており、労務トラブルは企業が直面する最も身近な問題であるといえます。

労務トラブルは、ルールの整備に関するもの、賃金に関するもの、解雇に関するもの、ハラスメントに関するもの、問題社員に関するものなど多岐にわたります。

この点、日本の労働関係法令の多くは、労働関係や労働者の地位の保護・向上を重視しているため、労務トラブルが法的紛争に発展した場合には、使用者側に厳しい判断が下される傾向にあります。

また、労務トラブルに対する初動や対応を誤ると、企業の信用性を損ない、企業経営に大きなダメージが生じることにもなりかねません。

したがって、労働者との間で労務トラブルが生じた場合に、法的知見を踏まえて適時・適切に対応する必要があることはもちろん、労務トラブルを防止するためにルールを整備したり、従業員に対する研修を行ったりするなど、平時の備えを充実させることが重要です。

個別労働紛争解決制度は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、都道府県労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。

2.個々のトラブル

契約書には上記のような意義があるにもかかわらず、多くの企業で契約書をめぐるトラブルが発生しているのが実情です。

(1)ルールの整備に関するもの

就業規則は、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集です。

就業規則は、労使間の紛争を未然に防ぐとともに、紛争が発生した場合には紛争解決の根拠となりますので、就業規則の整備は極めて重要です。

したがって、就業規則は、一度作成すればそれで足りるというものではなく、法改正や会社の業務内容の変化等を踏まえて、都度アップデートしていく必要があります。

また、近年、従業員によるSNSでの言動が原因で、企業の社会的評価が損なわれる事例が多発していますので、従業員に対するコンプライアンス教育の徹底が重要な課題となります。

(2)賃金に関するもの

賃金に関するトラブルで圧倒的に多いのは、未払い残業代の問題です。未払い残業代の請求は、賃金という労働者にとって重要な労働条件に関するものですので、実務上、もっとも紛争になりやすい問題の一つです。

未払い残業代の問題は、法律上義務づけられている割増賃金の未払いという単純なものから、労働時間制度の複雑化・多様化に伴うものまで様々です。

そして、未払い残業代の問題の大きな特徴は、一部の労働者にとどまらず、全労働者に波及する可能性があるという点にあります。

一部の労働者からの未払い残業代請求が認められるということは、企業が採用する賃金制度や管理方法に欠陥があることを意味しますので、全労働者から未払い残業代請求が行われるリスクを孕んでいるということになります。

したがって、企業には、慎重に賃金制度を構築・管理することが要求されます。

(3)解雇に関するもの

解雇とは、使用者が労働者との雇用契約を一方的に終了させることをいいます。解雇は、労働者の生活に直結しますので、実務上、もっとも紛争になりやすい問題の一つです。

解雇には、労働基準法や労働契約法等で、様々なルールが設けられています。
なかでも、解雇権濫用法理は、実務上もっとも重要なルールであり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、解雇権を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)

企業が労働者を解雇するには、上記の解雇権濫用法理のハードルをクリアする必要がありますが、世間一般で考えられているよりも、そのハードルは遙かに高いといえます。

そして、解雇に関するトラブルが紛争化し、裁判で長期間争った結果、解雇が無効と判断された場合には、企業は、全く働いていない労働者に対して、解雇日からの賃金相当額を支払うことを余儀なくされます。

したがって、企業には、労働者との契約関係の終了について、法的知見を踏まえて慎重に対応することが要求されます。

(4)ハラスメントに関するもの

ハラスメントとは「迷惑行為」「嫌がらせ」という意味しますが、日本では特に、職場におけるセクシャルハラスメント(いわゆるセクハラ)、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント(いわゆるマタハラ)、パワーハラスメント(いわゆるパワハラ)等を意味する単語として用いられています。

セクハラ、マタハラ、パワハラについては、法律や厚生労働省の指針によって、ハラスメント防止措置が企業に義務づけられています。

ハラスメントに関するトラブルが発生した場合、企業は、被害者から損害賠償請求という法的責任を追及されるにとどまらず、労働者の勤労意欲の低下、レピュテーション被害による企業の社会的評価の低下、SNSに端を発する新規・既存取引や新卒採用への悪影響等、広範かつ甚大なダメージを受ける可能性があります。

したがって、企業は、ハラスメントについて正しく理解したうえで、社内規定を整備し、万が一ハラスメントに関する問題が発生した場合には適時・適切に対応することが要求されます。

(4)問題社員に関するもの

問題社員に関するトラブルの相談も年々増加しております。遅刻・欠勤を繰返す、職場の同僚との協調性に欠ける、会社を誹謗・中傷する、業務外で犯罪に関与し刑事処分を受けるなどの在職中の問題から、社宅の明け渡しに応じない、退職後に守秘義務を守らない、従業員の引き抜きを行うなどの退職後の問題まで、様々なバリエーションがあります。

しかし、上記の解雇権濫用法理に照らして、問題社員であるからといって解雇が許されないケースも多いですので、そのような場合には、退職勧奨を行って協議を重ねたうえで、自主的に退職してもらう必要があります。

3.弁護士への依頼

労務トラブルを予防するためには、就業規則を整備し、適切な労働時間管理、ハラスメント対策等、適法な労働環境を整備しておくことが必要となります。

また、日本の労働関係法令は、その多くが労働者保護を重視する規制内容となっているため、労働関係法令をきちんと理解したうえで労務トラブルの対応・解決に当たらなければ、企業に広範かつ甚大な損失が生じる結果となってしまします。

この点、弁護士に依頼することによって、労働関係法令や最新の裁判例を踏まえて、労働環境を整備したり、労務トラブルが発生しても迅速に助言を得たりすることが可能となります。

また、早期かつ円満な解決に向けて、労務トラブルに関する交渉や法的手続の一切を弁護士に依頼することで、本来の業務外の負担を軽減することが可能となります。

また、労務トラブルに関しては、労働審判(※)という特有の手続があり、早期に主張・立証を尽くす必要があることから、労働審判の申立てがなされた場合には、弁護士に依頼する必要性が高いといえます。

初回のご相談は無料となっておりますので、労務トラブルでお困りの企業の方は、まずはお気軽に当事務所にご相談ださい。

労働審判手続は、解雇や給料の不払など、個々の労働者と事業主との間の労働関係のトラブルを、その実情に即し、迅速・適正かつ実効的に解決するための手続です。訴訟手続とは異なり非公開で行われ、原則として3回以内の期日で審理を終えることになっており、約67%の事件が申立てから3か月以内に終了しています。